口の中には目に見えない細菌がたくさん住んでいます。細菌はちいさな生活集団をつくり、歯、歯肉、口唇、舌などいたるところの組織に人の生活にあわせて存在しています。健康な人であれば、誰でも多くの細菌を口の中に持っています。そのほとんどが害になるものではありません。その中のわずかの細菌がお口の中でわるさをするのです。
しかし細菌が直接、エナメル質を攻撃し、穴をあけてしまうのではありません。歯のエナメル質の表面に細菌群が集落をなし、唾液のタンパク質と混ざり合い、細菌の集落は歯の表面に白い膜をつくります。この白い膜をプラーク・歯垢といいます。そしてこのプラーク・歯垢が虫歯を引き起こす原因となります。

歯の表面を覆うエナメル質はハイドロキシアバタイトとよばれるリン酸カルシウムでできています。これは体の中で最も硬い組織ですが、酸に弱い傾向があり、phが5.5より低くなると急激に溶け出してしまいます。

歯垢は唾液で洗い流したり、歯磨きで簡単に取り除くことがむずかしいのです。
食事をとると、歯垢の中にすむ細菌が糖を分解して酸に変え、その結果2〜3分で歯垢のphは酸性に傾きリン酸イオンやカルシウムイオンが歯から溶け出す、いわゆる脱灰がはじまります。この脱灰の時間が長く続いたり、酸性度が強いほど虫歯の危険性が強まります。しかし、食事の時には唾液が多く分泌されるので、歯垢中の酸は重炭酸などの唾液の成分で中和され、歯垢のphは上昇していきます。そこで歯から溶けだして歯垢の中にあったリン酸イオンやカルシウムイオンが、歯の表面に再び沈着し、歯が修復されます。ですから1日3回の食事で簡単に虫歯になるわけではありません。

ところが、間食の回数が多すぎると、脱灰、再石灰化のリズムが壊れてしまい、歯が修復される間もなく、歯垢の中で酸がつくられ続け、歯垢のphが下がったまま、歯が溶け続けます。そしてついには歯の修復が追いつかなくなり、小さな穴があいてしまいます。

酸でエナメル質が溶かされても、痛みは感じませんし、それどころか自分の体に変化がおきていることなど誰も気がつきません。ですがひとたび小さな穴があいてしまうと、しだいに進んでいき、エナメル質の下の象牙質にそして歯髄へとおよんでいきます。ほとんどの方は痛みを感じてはじめて自分には虫歯があると気がつくわけです。