2011/10/11
シロアリ退治をやれ
 
選挙制度改革を餌にした公明党取込み戦略
 9月、細川護煕元首相の政務秘書官だった成田憲彦駿河台大学教授(前学長)が、野田総理の内閣官房参与に就任した。細川元首相の推薦である。

 成田氏は、秘書官になる前、国立国会図書館調査及び立法考査局政治議会課長を務めた。選挙制度の専門家であり、細川元首相の右腕として、現行小選挙区比例代表並立制の導入に腕を奮った。

 その成田氏は、もともと小選挙区比例代表連用制(以下「連用制」という。)を主張していたと聞く。成田氏の起用と軌を一にするよう、公明党が連用制を目指した選挙制度改革案を提言するという情報が伝わった。

 細川元首相は、朝日新聞のインタビュー(9月19日)に答えて、こう語っている。「公明党は小政党に有利な小選挙区比例代表連用制を打ち出そうとしている。表立った課題になるかどうかはわかりませんが、彼(成田氏)はこのあたりも習熟している」

 成田氏の起用は、選挙制度改革を餌にした公明党の取り込み戦略だったのだろう。その公明党は、もともと中選挙区制を主張していた。

 しかし、みんなの党が議席をとってしまうと懸念したらしい。中選挙区制よりも、比例代表議席の配分において小選挙区の議席を有さない政党にとって有利になる小選挙区比例代表連用制にかじをきったようだ。

連用制に強く出る公明党レバレッジ力
 この連用制とはどういう制度かはあまり知られていない。選挙制度改革の過程を経た90年代では、胡散臭い制度といわれた。大政党側にも小政党側にも都合よく解釈できる制度とされた。

 試みに、公明党がいうような連用制と、連用制の突出を避けるため掲げているような小選挙区比例代表併用制(以下「併用制」)で、昨年の参議院選挙の各党比例得票をベースに議席の占有割合のシミュレーションをやってみた。

 まず、小選挙区比例代表併用制で、衆議院の北関東ブロックでシミュレーションしてみた。自民党が、単独だと22.4%の占有率にとどまるが、公明党との選挙協力が完璧に機能した場合の自民党の議席は40.0%まで上昇する。

 しかし、驚くことなかれ。これを連用制でやってみる。なんと、自民党21.2%から50.0%まで跳ね上がる。これは他の地域ブロックでも同じような方向の結果が出る。

 これは何を意味するのか。要は、併用制より連用制の方が、公明党の選挙協力のレバレッジが強く効くということだ。協力の相手が自民から民主に変われば、民主がボロ勝ち。

 比例代表による議席配分を現行制度よりも優位に運び、そして自らの選挙協力の影響力を更に強める周到に練られた選挙制度の案だ。

 ここに、連用制主張の成田氏をぶつけてきた細川元首相の深謀遠慮の跡がうかがえるが、その思惑は簡単には成就しないだろう。

あるべき選挙制度改革とは
 こういう党利党略に捉われず、選挙制度改革はどうあるべきだろうか。日本選挙学会理事長を歴任し、選挙制度の第一人者の小林良彰慶応義塾大学教授はいう。

 「米国のように、地方交付税がなく地域によって格差がはっきりしている場合は、小選挙区にしても民意が反映されるかもしれない。例えば、デトロイトで選ばれた代表、フィラデルフィアで選ばれた代表は、それぞれの地域の民意を反映している。

 しかし、日本のように、地方交付税があり、地域間の格差が小さくまだら模様になっている国土の特徴を有する国では、小選挙区では民意がうまく反映されない。」

 もちろん、かねていわれている小選挙区制の死票の問題も存在する。

定数自動決定式比例代表制で投票率アップ
 小林教授は更に続けていう、「民意の反映、人(候補者)の選別、(区割りなどの)恣意性の排除、一票の格差の是正などを一挙に解決する妙案がある。それは、『定数自動決定式比例代表制』である。」

 これは、次のようなやり方をとるものだ。

 (1)投票区割りは、都道府県毎別とする。

 (2)有権者は、政党名又は非拘束名簿方式の候補者名で投票する。

 (3)候補者名と政党名を全国で合算集計し、政党別に議席を割り振る。

 (4)各党別に「都道府県/全国 の票数」に応じて各党別に都道府県の議席を配分する。

 (5)都道府県毎に各政党の中で候補者名の多い順に当選者を決定する、

 都道府県毎に集票し、全国ベースで議席を各党に割り振るものだ。これであれば、

 (1)有権者で馴染み深い都道府県単位の距離で、各候補者に対する意見集約ができる。

 (2)特定の候補者や政党に有利になるような区割りの際のいわゆる「ゲリマンダー」は生じない。

 (3)全国ベースで政党別に議席を割り振ることから一票の格差の問題は生じない。

 (4)無所属候補も一人政党などで立候補できる。

 そして、何より、投票率が高い都道府県ほど、議席が増えるので投票率アップに強烈なインセンティブを与える、絶妙の案だ。

 みんなの党が、従来より訴えてきた、民意の的確な反映、一票の格差の是正、議員定数大幅削減(衆院180名減で300名)などの方向に合致するので、この小林案を軸にして、選挙制度改革の議論を深めたい。

 選挙制度改革は政界再編の切っ掛けにもなる。小選挙区のもとで民主も自民も似た者同志となり、政治が劣化した。「何をなすべきか」というアジェンダのもとに政界再編を行う絶好のチャンスだ。

シロアリ退治をやれ
 さて、野田総理がこうした選挙制度改革を餌にしてまで釣りたい公明党と進めたいのは単に増税だ。去る10月7日、増税基本方針を閣議決定した。

 野田総理は過去の発言がブーメランのように帰ってくるのに気づいていないのか。

 政権交代直前の2009年7月14日、麻生内閣の不信任決議案の賛成討論で何を語っていたか。

 「2万5,000人の国家公務員OBが天下りをしたその4千500法人に12兆1,000億円の血税が流れている。その前の年には、12兆6,000億円の血税が流れている。消費税5%分のお金です。これだけの税金に、一言で言えば、シロアリが群がっている構図があるんです。そのシロアリを退治して、働きアリの政治を実現しなければならないのです。」

 私は、9月15日の代表質問で聞いた。12兆6,000円のカラクリからいくら復興財源へまわすのか。野田総理はゼロ回答。民主党政権が進めている現役出向は天下り扱いしないなど野田総理のいうシロアリ退治は全くできていない。

 これで増税をしようとは言語道断。みんなの党は、改めて、こういうカラクリ解明について徹底討論をやっていきたい。