
はじめて小児ルームに入ってくる時の子どもたちは不安でいっぱいです。ましてやお母さんやお父さんと一緒ですから、お母さんの手をしっかり握りしめ、私たちスタッフとの間に見えないバリアーをはられてしまいます。無理もないですね。時にはお母さんの方が緊張されている場合もあります。「幼稚園は?」「何組さんなの?」などの質問に、全部お母さんが答えられたり、「お口を開けて、大丈夫よ、お母さんここにいるからっ!」「なにもしないわよ、ガンバッテ!」などと、お子さんをなだめようとするあまり、お母さんが大きな声で騒がれたり。せっかくの出会いの初日は、往々にしてこんな具合でお子さんの本当の姿はわからずに終わってしまいます。 私たちとお子さんの本当の出会いは、小児ルームにお子さんが一人で足を踏み入れたときから始まります。もちろんお母さんやお父さんは、待合室で待っていただきます。なかにはどうしても「私が一緒ならば、この子は泣かないのに・・・」とお母さんが一緒でなければとおっしゃる方もいらっしゃいますが、ここは我慢していただきたいのです。 私たちはお子さんと信頼関係を作っていかなければなりません。そのためには、私たちとお子さんで時間を共有し、向き合って会話することを大切にしたいのです。泣くことも、暴れることも、私たちとコミュニケーションをとるひとつの手段です。どうぞ思いきり泣いて、暴れてください。そこから私たちの会話の始まりです。泣きながらでも、うなずいたり、首をふったりしてくれます。やがて今日の出来事、幼稚園で何をして遊んできたか、お友達がどうしたのか、治療が終わったら何処へ行くのか、昨日何処へ行ったのか、ぽつりぽつりお話ししてくれるようになってきます。少しずつですが、恐怖を乗り越える力を持ち始めると、こんどは積極的にいろんなお話をしてくれるようになります。なかには、泣きっぱなしだけれど、最後のあいさつがとても上手にできるお子さんもいらっしゃいます。 年齢はやはり3歳以上でないと、コミュニケーションは難しいですが、2歳ぐらいでも、体でコミュニケーションがとれていると実感できるお子さんもいらっしゃいます。お子さんは一人一人みな違いますので、治療の恐怖を乗り越えて自信をもってみえるようになるには、2回目から平気なお子さんもいれば、5、6回目から、あるいは10回目からと様々です。 なかには最後まで泣きっぱなしで終わるお子さんもいらっしゃいますが、治療中会話はできているのです。泣く合間にお話をし、思い出してまた泣くという具合です。 また治療中は、お話もして平気なのですが、終わってお母さんの前で泣いてみせる知能犯もいたりします。 とにかく、子どもたちは天使です。いろんな場面を私たちに提供してくれます。お子さんとの10分間は、とても楽しい冒険です。泣かないことが良い子とは限りません。そのお子さんに合った表現方法で自由にして下さい。お子さんの中にそれぞれの天使を発見したいと思います。 お子さんと人としての信頼関係を築けたなら、治療は大成功です。お子さんの様子から、どの段階かを見つめていただきたいと思います。 |