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第14回審査結果

審査委員 (50音順・敬称略)…勝城蒼鳳・金子賢治・日原公大藤原郁三本間一秋

最優秀賞(文部科学大臣賞)

『 千鳥編花籃 「潮華」 』 友成 晴美

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『 千鳥編花籃 「潮華」 』
友成 晴美

受賞作品講評


とてもモダンな感覚で、デザイン性にすぐれ、ほぼ満票で文句無しの最優秀賞に選ばれた。
二重編みになっている外側は、スッキリした縦線がバランス良く2色に配色され、その上に
緻密な千鳥編の大きな面が、大胆に斜めにかぶさる事で、あたかも回転しているかのような
ムーブマンを生み出している。
線と面のシンプルな構成による竹工芸ならではの、やさしく、しかも力強い作品である。
あえて複雑な形にせず、優れた技術力をさりげなく凝縮させているところにに完成度の高さ
を感じた。

                                               藤原 郁三




優秀賞(栃木県知事賞)

『 花 籠 』 井上 数夫

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『 花 籠 』
井上 数夫

受賞作品講評


ツートン千鳥編の水盤形花籠。煤ササラ縁は適度な太さで形を締めている。
編分段差の斜線は、平凡な形を引立て粋である。
しかし、編外側の波状縄編は無用。

                                      本間 一秋




優秀賞(栃木県知事賞)

『 鉄線編組花籃 「礎」 』 井上 守人

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『 鉄線編組花籃 「礎」 』
井上 守人

受賞作品講評


鉄線編のパーツを三個作り、それを組んで造形してある。
明るい編に対して縁当の色を強くして輪郭線を強調し
形の円やかさを演出し、現代感覚をアピールしている。

                           勝城 蒼鳳




優秀賞(栃木県知事賞)

『 連続桝網代盆 』 柳澤 智香子

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『 連続桝網代盆 』
柳澤 智香子

受賞作品講評


八角形の盆型で、立ち上がりが直立したがっちりした構成を見せている。見込みは三種類の
幅による桝形を表し、それを花丸網代にまとめている。立ち上がりは縦網代編とし、上下を
太めの竹でしっかりと止めている。それが力強いしっかりとした形態感を醸し出す。
底を二重にし、間に和紙を接着して強度を増している。全体を金茶染の濃淡で染めている。

                                                金子 賢治




デザイン賞(大田原市長賞)

『 夫婦スタンド 』 鈴木 欣男

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『 夫婦スタンド 』
鈴木 欣男

受賞作品講評


丸竹の一部を縦に割って開けたところに、麻の葉で明が漏れるようにデザインされている。
爽やかなイメージが伝わって、今迄にはない新鮮味のある作品に仕上げられている。
竹の持ち味も存分に生かされ、無理のないデザインは粋である。

                                              勝城 蒼鳳




デザイン賞(大田原市長賞)

『 盛籠 「草原」 』 木 政美

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『 盛籠 「草原」 』
木 政美

受賞作品講評


両サイドが強く湾曲して反り上がった形態をした盛籠である。その湾曲の仕方が実に力強い
印象を与えるように作ってあり、形全体を引き締め、現代的な感覚を与えている。
二重に作ってあり、表は松葉編、底は網代編としている。間に和紙を張って接着している。
とっても実に神経細やかな作りを見せており、全体のデザイン感覚もよい。

                                               金子 賢治




デザイン賞(大田原市長賞)

『 マイバッグ 』 前田 悦子

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『 マイバッグ 』
前田 悦子

受賞作品講評


晒竹の桝アジロ編半楕円バッグ。
抱合せ削取手と梅花取付飾、更にサーモンピンクの布の内袋端の三角止具等々
美しいハンドバッグで使いよさそうである。
題名「マイバッグ」に示す様に、心を込められた愛着の持てる快作である。

                                         本間 一秋




新人賞(実行委員会委員長賞)

『 八角盛皿 』 関矢 嘉行

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『 八角盛皿 』
関矢 嘉行

受賞作品講評


素材の幅と色を変化させて編まれた八角の盛皿(盛籃)で花枡網代で編まれ、この作品は
大らかな文様で色調も良く、竹の素材感も損なわれず、外側も同じ網代ですが一色で編まれ
内側を引き立てており、形も硬くならずに仕上げ魅力を感じます。

                                                勝城 蒼鳳




新人賞(実行委員会委員長賞)

『 無双編盛篭 』 瀧野 良弘

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『 無双編盛篭 』
瀧野 良弘

受賞作品講評


外側は無双編だけの何の変哲もない作品だが、内側の底に網代編による波模様をつけて
ポイントにしている。
なんといってもこの作品の見どころは取手の大きな円であろう。
一見大きすぎるように思えるが、取手の円形の中に篭がすっぽり収まっている為、全体に
円の回転運動を感じる。
この作家のバランス感覚の良さに将来性を買った。

                                              藤原 郁三




新人賞(実行委員会委員長賞)

『 白竹網代文手提げ篭 』 平 郁夫

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『 白竹網代文手提げ篭 』
平 郁夫

受賞作品講評


どっしりとした温かみのあるフォルムに軽やかなリズム感、なんと言っても取ってのボリュウムに
好感が持てました。側面の網代編みのテクスチャーも透明感を感じさせ細やかな知性が窺われます。
人をひきつける構成とその期待に負けない布とのコラボレーションは飽きのこないシンプルな形で
纏めた作者の感覚の良さが光った作品です。作風の幅が広がる作品です。

                                                     日原 公大



〜 第14回 全国竹芸展 総評 〜

日原 公大


今年の出品点数は、若干減り作品総数は110点となりましたが、整理された質の揃った
感じがいたしました。例年以上に、密度の高い伝統的な器などの作品とランプシュエイド
バッグ、屏風など現代的で実験的な作品が入り混じるようになり楽しい審査になりました。
審査委員本間一秋氏、勝城蒼鳳氏、金子賢治氏、藤原郁三氏と私五人で、嬉しく厳正に作品
の審査をさせて頂きました。
流石に、竹芸王国大田原市からの多数の出品を始め、那須塩原市など栃木県からは安定した
数字が確認されました。県外は千葉県、群馬県、茨城県など首都圏からの出品が昨年より
増加傾向にあり、遠くは大分、福岡などから応募がありました。技巧的に優れた作品が語る
熱気が審査会場に溢れ、竹芸展覧会の存在が幅広く浸透していると実感を持ち頼もしく感じ
ました。それ故、どの作品も優劣つけがたく選考するのに大変苦労致しました。審査員の
評価は見事に分かれ、どの賞も僅差の勝負になりましたが、その中で特に心に響く作品が
ありました。
最優秀賞の千鳥編花籃「潮華」です。特に声高に衒う事も無く、観る者を心安らかにする
バランスの安定した円筒形で下部が膨らみ、涼しげな風を感じる花籠でした。デザインも
現代的で色形とも感覚的に優れており、難しい形をさり気無く仕上げる技術は全審査委員の
票を満遍なく獲得いたしました。丹念に、様々な編み方で工夫を凝らした作品は年々増える
のですが、これは!と目を見張るような心動く作品が少なくなる中で、とても新鮮な温まる
感情を抱かせてくれた作品です。
人が感動を覚える瞬間は人により差異があり、又、様々な場面が考えられます。しかし、
共通することは初めて鮮やかな事柄に出会ったとき誰でも心が震えるものだと思います。
それ故他の人がすでに試みた形、バランス、テクスチャー等をどんなに上手にコピーしても
感動が薄くなることは、よくご存じの事と思います。
人を感動させる素晴らしい作品を作る上で大切なことは、作者の感性を高めることに他なり
ません。それは、特別な事では無いのです。普段何気なく観ている風景を改めて注意深く観察
し、自然の持つ秩序を大切にする努力を怠らないようにすると美しい形が近づいてきます。
ただ単に表面的な美しさに囚われる事無く、その感動を自分に必要なものとして取り入れて
創作してみてはいかがでしょうか。