〜 第14回 全国竹芸展 総評 〜
日原 公大
今年の出品点数は、若干減り作品総数は110点となりましたが、整理された質の揃った
感じがいたしました。例年以上に、密度の高い伝統的な器などの作品とランプシュエイド
バッグ、屏風など現代的で実験的な作品が入り混じるようになり楽しい審査になりました。
審査委員本間一秋氏、勝城蒼鳳氏、金子賢治氏、藤原郁三氏と私五人で、嬉しく厳正に作品
の審査をさせて頂きました。
流石に、竹芸王国大田原市からの多数の出品を始め、那須塩原市など栃木県からは安定した
数字が確認されました。県外は千葉県、群馬県、茨城県など首都圏からの出品が昨年より
増加傾向にあり、遠くは大分、福岡などから応募がありました。技巧的に優れた作品が語る
熱気が審査会場に溢れ、竹芸展覧会の存在が幅広く浸透していると実感を持ち頼もしく感じ
ました。それ故、どの作品も優劣つけがたく選考するのに大変苦労致しました。審査員の
評価は見事に分かれ、どの賞も僅差の勝負になりましたが、その中で特に心に響く作品が
ありました。
最優秀賞の千鳥編花籃「潮華」です。特に声高に衒う事も無く、観る者を心安らかにする
バランスの安定した円筒形で下部が膨らみ、涼しげな風を感じる花籠でした。デザインも
現代的で色形とも感覚的に優れており、難しい形をさり気無く仕上げる技術は全審査委員の
票を満遍なく獲得いたしました。丹念に、様々な編み方で工夫を凝らした作品は年々増える
のですが、これは!と目を見張るような心動く作品が少なくなる中で、とても新鮮な温まる
感情を抱かせてくれた作品です。
人が感動を覚える瞬間は人により差異があり、又、様々な場面が考えられます。しかし、
共通することは初めて鮮やかな事柄に出会ったとき誰でも心が震えるものだと思います。
それ故他の人がすでに試みた形、バランス、テクスチャー等をどんなに上手にコピーしても
感動が薄くなることは、よくご存じの事と思います。
人を感動させる素晴らしい作品を作る上で大切なことは、作者の感性を高めることに他なり
ません。それは、特別な事では無いのです。普段何気なく観ている風景を改めて注意深く観察
し、自然の持つ秩序を大切にする努力を怠らないようにすると美しい形が近づいてきます。
ただ単に表面的な美しさに囚われる事無く、その感動を自分に必要なものとして取り入れて
創作してみてはいかがでしょうか。
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