〜 第13回 全国竹芸展 総評 〜
日原 公大
年々、殺伐とした事柄が増え、文化芸術の話題が少なくなり寂しい世の中に成りつつある昨今
本年の出品数が若干増加したことは嬉しい限りです。
今回、審査対象となった作品は“竹”王国栃木県大田原を中心に、北は青森、南は大分と全国
から見ごたえのある作品が総数127点集まりました。その上、例年に比べると技術的に密度
の高い作品が大半を占めるようになりました。審査委員勝城蒼鳳氏、金子賢治氏、本田一秋氏
と今年から新たに藤原郁三氏を加え、私と五人で厳正に楽しく作品の審査をさせて頂きました。
ずらりと審査会場に並んだ作品は年を経るごとに技巧的に優れたものが多く、何れも優劣つけ
がたく選考するのに大変苦労致しました。案の定、審査員の意見は見事に分かれ、どの賞も
僅差の勝負になりました。その中でも最優秀賞に輝いた縄文様花籃「丑」は、新鮮さで群を
抜き、独自性、完成度もあり、文句なしの受賞であったことは今展覧会の特筆すべき点です。
全国からの応募もここ三、四年は安定した出品数を得ており、全国竹芸展の存在が幅広く浸透
していると実感し頼もしく感じております。
さて、機会が在る度に述べておりますが、確かに技巧的には年々見事な作品が増えております。
しかし、一抹の不安があることも否めません。冒頭に僅差の勝負になったと書きましたが
言葉を変えると同じような物ばかりが多数出品されているともいえます。他人との差をつけると
言うことは展覧会では特に求められるものです。特色豊かな個性的な作品が少なくなる傾向に
あるのは残念でなりません。
今回、審査の過程で問題視されたことは、何故こんなに同じ形のものが多いのだろうかという
ことです。確かに竹芸の性格上、形や技術の上で制約もありますが、其の制約を越える努力が
必要で、其の過程で少しずつ人と違う形が現れて来るのだと思います。
竹を習い始めて間もない人の出品は大いに歓迎するところです。しかしながら、師の教授する
形を其のまま展覧会に持ち込んでは創造の趣旨に外れます。創造する事については個々様々な
思いが有りますが、共通することは創造とは常に新鮮であり、明るい未来を感じさせなければ
成らないのです。其の上、人に勇気と希望を与えるものが加味されれば云う事はありません。
残念ながら、目を見張るような作品が年々少なくなるのはなぜでしょうか。同じ人間が二人と
して居ない様に作品も同じ物は出来ないのです。人を感動させる良い作品を作る上で大事な
ことは、日々の生活の中で作者の感性を高めることです。普段見過ごしている風景や身近な
自然に少し注意を払うと思い掛けない美しい物、美しい事象に気が付きます。ただ作品を造る
ために手を動かすのではなく、その発見の喜び感動を自分に必要なものとして創作してみては
いかがでしょうか。
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