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第11回審査結果

審査委員 (50音順・敬称略)…柏村祐司・勝城蒼鳳・金子賢治・日原公大・綿貫 清

最優秀賞(文部科学大臣賞)

『 縄文様花籃「枯野」 』橋本 忠昭

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『 縄文様花籃「枯野」 』
橋本 忠昭


総評
今年からこの展覧会の名称よりアマチュアという文字が消えた。
理由は実にシンプルである。これまで以上に美しく創造性あふれる竹芸の誕生の可能性を願ってのことと聞いた。
今までの竹芸展のアマチュアの定義は、何事にも束縛されぬ人々の新鮮な美の誕生に期待して付けられたと思う。
そして、10年続いたこの展覧会は多くの優秀な竹芸家の育成と地域の文化活動に十分な結果を得たと信じている。
しかし、一方でアマチュアという言葉に呪縛を受け、環境に甘んじた作品が多くなってきたのも事実である。簡単に
師匠の作品様式に目標を定めてしまい、編み方、組み方や師が生み出した形の上面だけの習いに終始する作品
が多く見られるようになって来たのである。
もちろん「芸事の始まりは習いから始まる」この言葉には異論を挟もうとは思わない。しかし、それぞれの環境から
育まれる異なった感性を持った人間が習い事から同じものを作れるとも信じない。同じ形を踏襲する行為が延々と
続くのが単純に伝統だとしたら大変なことだ。
伝統という言葉を、辞書で引くと「民族や社会、集団の中で思想や習慣、様式、技術など規範的なものとして受け
継がれてきた事」とある。その伝統に美という一文字が付くと受け継がれてきた様式や技術の中に作り手の感性
が要求される。なぜなら感性こそが美と直結した大切なエネルギーであるからである。美を追求した先人の偉業を
後世まで守る意味は大いにある。が、唯同じ「形」や同じ「こと」を踏襲するだけでは伝統にならないと思う。
今に生きる人の感性と伝えるべき
伝統の思いを作品に包み込まなければ、そこに残るのは形骸だけである。
繰り返すが先人が残した形式や技術を習得するのみでは歴史の新たなページは開くことは出来ない。未来に向け
て活力を産み、楽しく生きる事が出来る気持ちが滾るような物や事柄が生み出されてこそ、それが芸術に成るの
では無いだろうか。
自分自身の感性を磨き、伝えるべき思いを大切にして作品に編み込み組込んだりしてこそ新しい伝統美が出現
する可能性はあるのだ。この展覧会を益々バージョンアップさせるべくアマチュアという言葉は外されたのである。
だからこそ今、伝統美とは何かを改めて問い直す良い機会なのかも知れないと思う。
今年度第11回全国竹芸展に西は大分から北は青森までと全国から多くの出品があった。また、当然ながら力量
が格段優れた作品も多数集まり、審査会場は今までに無く多彩で明るく爽やかな雰囲気に溢れていた。
審査委員(勝城蒼鳳、柏村祐司、金子賢治、綿貫 清の各氏と私5名)は緊張感と心地よい豊穣感に包まれ時間を
掛けながら各賞の投票に入った。今年の審査内容で特筆すべきはどの部門の賞候補作品も僅差の勝負になった。
僅差と言うことは作品の魅力が均衡していると言う同義語である。作品はそれぞれ
異なった魅力を表出しており、
優劣が付けがたく長時間の論議を重ねたが決定までに大変難航した。
その中で今年の最優秀賞には橋本忠昭氏の「縄文様花籃〔枯野〕」に決まった。


                                                       審査委員長 日原 公大